8月8日、東北電力と東京ガスが出資している新電力会社「シナジアパワー」は、電力小売り事業から11月末で撤退すると発表しました。
ですよねー感の伴うこの撤退劇は、高圧・特別高圧の電力を必要とする大口需要家である法人向けの同社でさえ「高騰した電力の仕入れ値が原因で収支改善の見通しが立たなくなった」ことが背景とされます。
しかも「シナジアパワー」は、新電力会社の中では非常にまともな部類の会社であり、冒頭にもありますように首都圏に営業先が絞られ、主に東京電力と大口契約をしている法人をターゲットにしていました。
そればかりか、供給する電力の約6割が東北電力や東京ガスからであって、調達燃料価格の問題により一時期供給相場がハネ上がったJEPX(日本卸電力取引所)からの調達は約2割、太陽光などをソースとしたFIT電気を含む再生エネルギー系の調達も約1割と、自力電源で一定程度賄い、外部ソースも利用して安い電力を法人向けに提供しようとしたという点で、他の新電力系も「シナジアパワーで駄目ならみんなアカンのではないか」と思うような状態になっていたのであります。大手企業ならではの組織的な問題もあったやには聞きますが、ともあれ関係者の皆さまはお疲れさまでした。
約700社超が設立されたこれらの新電力会社は、企業調査会社の報告によれば22年3月末時点ですでに30社以上が事業の破綻による倒産・破産や事業撤退を余儀なくされています。これらの企業のほぼすべてが、ロシアによるウクライナ侵略やコロナ経済によるサプライチェーンの断絶などを背景とした世界的なエネルギー価格の上昇により高騰した電力の仕入れ値が、販売価格を上回る逆ザヤを起こしたことが理由です。
□一般家庭電力料金10万円の背景って
本来、新電力は電力事業の自由化を謳う政策の担い手として、企業や家庭など需要家が寡占の大手電力ではなく、価格競争に基づいて価格やブランドなどの異なる複数の電力会社を選ぶことのできる競争政策を実現するはずでした。
しかしその実態は悩ましいもので、過渡的な電力市場であるJEPXなどの卸市場から電力を仕入れ、これに利益を載せて、東京電力ほか既存の電力会社インフラの上に乗せて右から左に売るだけのビジネスになってしまっていました。
太陽光以外で自前で発電をする新電力会社が少ないのですから、生産性の向上を伴う意味のある競争にならなかったのも当然と言えます。
さらに、これらの新電力会社のうち、なお経営危機が叫ばれている企業グループもまた、ほぼ例外なく都市部近郊や山間部にメガソーラー発電所の運営を行うなどのFIT電力での電源開発をしています。
やめておけばいいのに。
単純な話、安いソーラーパネルを敷き詰めて得られた電力をJEPXで売り、他方で既存の東京電力など大手電力会社10社から安定した電力を受けたり、JEPXから電力を買うなどして電力の調達価格を下げて、安い値段で電力を法人やご家庭に売る仕組みを画策していたわけですよ。
ところが、卸からの電力仕入れが高騰してしまえば、契約先に電力を売る値段を引き上げなければ当然経営は成り立たず、これらの新電力は今年の2月以降、続々と経営危機が叫ばれるようになったのです。
例年、暖房需要が落ち着くはずの今年3月から4月にかけて電力卸でのスポット取引(随時契約)での平均価格は15.8円ないし17.8円/kWhとなり、前年の約2.7倍になってしまいました。そればかりか、本稿執筆時点である8月11日受渡分のシステムプライスは45.6円/kWhとなり、酷暑で電力需要が急増すると新電力が調達する価格も跳ね上がってしまいます。
問題は、この夏の一過性のことではなく、世界的なエネルギー価格が高止まりしてしまうと、電力需要が大きい季節がやってくるごとに似たようなクソ高い仕入れ値になってしまうことにあります。
これを受けて、仕入れ電力に電気代が連動する新電力サービスにおいては、ご家庭の契約電力代が月間10万円を超えるケースも続出しました。
……
(残りは元ソースからご覧ください)
□「まずは再生エネルギー重視」の結果
https://gendai.media/articles/-/99084?page=3
□こんな仕組みで国民生活の根幹を担えるか
https://gendai.media/articles/-/99084?page=4
□間に合わない原発再稼働
https://gendai.media/articles/-/99084?page=5
□関連記事
脱「脱原発」に踏み出した岸田首相は世論の風圧に耐えられるか(磯山 友幸) | マネー現代 | 講談社
https://gendai.media/articles/-/99086
2022.08.29
現代ビジネス | 講談社(1/6)
https://gendai.media/articles/-/99084
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